Interview Relay ~42のストーリーで想いを繋ぐ~
My Tokyo Marathon is…? 1年間の全てを出し切る集大成
- 走る人
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東京マラソンへの想いを42のストーリーで繋ぐインタビューリレー。
今回はランニングアドバイザー、インフルエンサー、モデルなどマルチに活躍、東京マラソンには2022年、23年、24年と3年連続で出場している三津家貴也さんです。全国各地のさまざまなマラソン大会に参加している三津家さんが感じる東京マラソンの魅力、愛される理由とは? そして、節目となる2027年の20回大会に向けた今後への期待などを東京マラソンファンランナー代表として語っていただきました。
マラソンをマラソンだけで終わらせない
――三津家さんがマラソンを始めたきっかけを教えてください。
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僕は高校、大学と陸上部で800m、1500mの中距離の選手をやっていて、社会人になってからも実業団で走っていました。それで日本選手権にも出場することができたのですが、実際に出てみるとあまり盛り上がっていないというか、観客が全然いなかったんですね。夢にまで見た日本選手権だったのに、その現実が悲しかった。夢の舞台に立ったのに何も報われない、人に全然見られていない。これをどうにか変えたいなと思って、TikTokを始めたんです。
そこから「ランニングを盛り上げよう」みたいな動画をどんどん出していたのですが、その頃に知り合いから誘われて北海道マラソンに出ました。そうしたら、これがめっちゃ楽しかったんです。旅行がてらみんなで行って、マラソンを走り、みんなで打ち上げをして現地の美味しいものを食べる、みたいなことがすごく楽しくて「あ、ランニングってこんなに楽しいんだ」って。それに北海道マラソンも2万人近い参加者がいたのですが、こんなに大勢の人たちといっしょに目標に挑戦することって素敵だなと思ったんです。誰とも競わなくていい、自分が好きなように走っていいんだと。それが楽しくて、あ、こういう楽しみ方もアリなんだと知るきっかけにもなりましたね。今まで自分がやってきた陸上だと「頑張らなきゃ」という感じでしたから。そこからもうマラソンにどっぷりハマってしまいました。
――マラソンの後の飲み会なども含めて楽しい、ということですね。
そうですね。「マラソンをマラソンだけで終わらせない」というのが僕のテーマなんです。その前後も楽しもうよ、と。走り終えた後の打ち上げもそうですし、飛行機で開催地まで行くのだったらそれは旅行として楽しい。また、その後の温泉なんかもいいじゃないですか。なので、僕の発信しているYouTube動画はマラソンが1~2分、あとの6~7分はそれ以外の遊びという感じで作っていて(笑)。視聴者の皆さんはマラソンの部分をもっと見たい人たちだと思うんですけど、あえてそれ以外で楽しんでいる姿をお見せして、あ、こんな楽しみ方もあるんだということを伝えたい。そうした見せ方でランニング人口の普及につながったらなと思っているんです。
――これは東京マラソン財団の早野忠昭理事長が提唱している「Fusion Running(フュージョン・ランニング」と同じ考え方ですね。早野理事長もランニングに何か自分の好きなものを掛け合わせて楽しもうとおっしゃっています。
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はい、全く同じ考えですね。僕はいくつフュージョンできるかというのをいつも考えていて、音楽も飲み会も一つの大会で全部やっちゃおうと(笑)。あと、それを一緒に楽しめる仲間がやっぱり大切ですよね。僕はマラソン大会での仲間づくりを大事にしていて、横のつながりをいかに作るか。42kmを走る皆さんにはフィニッシュするまでに友だちをたくさん作ってほしいと思っているんです。
年齢も性別も競技力も問わずに友だちを作ることができ、人とのつながりを実感できるのもランニングの素晴らしさだなと思うので、マラソン大会を通じてどんどん広げて行ってほしいなと思いますね。そして、楽しかったことをみんなで共有する、これが一番大事だと思っているんです。
まず「楽しむ」を第一に思ってほしい
――東京マラソン財団は「⾛る楽しさで、未来を変えていく。」をテーマに、「①⾛る楽しさで、⼈と⼈をつなぐ。」、「②⾛る楽しさで、健康な毎⽇をつくる。」、「③⾛る楽しさで、社会をよくする。」の3つのミッションの実現を目指しています。」三津家さんがランニングを通して伝えたいことを教えてください。
すごく素敵なミッションですね。そこに重なる部分もあるのですが、僕は「ランニングを通して人生をより豊かにできるか」「人生のQOLをいかに上げるか」というところを一番大事にしています。ランニングと言いますと、学生時代の部活や体育で追い込まされるみたいなイメージが強すぎて、ネガティブなものになっていますよね。でも、実はランニングの楽しみ方って何でもアリなんですよ。各々の楽しみ方を見つけてほしいですし、僕はそのランニングの楽しみ方が何個でもあることを自分の発信を通じて出すようにしています。競技性の楽しさもあれば誰かとつながる楽しさもある。
例えば沖縄のNAHAマラソンではオフィシャルではない様ですが、コースの途中で泡盛とかハブ酒が出されているんです。それで完走率が、なんと60%という(笑)。完走する気がないわけではないと思うんですが、ちょっと走って途中で帰る人がたくさんいるらしくて。それを知って、また僕の中で新しいランニング革命が起きましたね。そうした色々な楽しみ方を多くの人たちに発信して、ランニングの感覚を緩くしたい。かつ、究める人を阻害するわけではなく、究める楽しさも僕は知っているので、それについてももちろん発信しています。そうした色々な楽しみ方をみんなで共有してほしいなということがひとつ、僕が大事にしていることです。
――なるほど、三津家さんのミッションも凄く素敵ですね。
そしてもう一つは、何も制限しないこと。健康と言いますと、すぐに「体の健康」をイメージすると思います。でも、僕は「心の健康」がすごく大事だなと思っています。皆さん、マラソンを頑張るぞとなった瞬間に、なぜか食事制限、お酒制限、お菓子制限みたいに「制限」から始めてしまいますよね。でも、僕はこの「制限」という言葉が一番嫌いで、制限によって自分が満たされなくなっている。体的には健康になっているかもしれませんが、心に栄養が行きわたっていないからランニングの継続につながらないんですよ。
結局、ランニングをいかに継続していくか、自分の人生に長くランニングを取り入れるかが、「いかに人生を豊かにできるか」にトータルでつながっていると思っているので、ランニングを長く人生に取り込むためには制限をしちゃダメだと思っているんです。ですから、僕は食事、お酒、お菓子、遊び……もう絶対に制限しません。遊びもする、お菓子も食べる、お酒も飲む、その分カロリーが増えるから普段のランニングの時間をもうちょっと延ばそうみたいな形で、全部をやりたいと思っちゃいますね。
――三津家さんのようなランニング最前線のインフルエンサーから今のような話を聞きますと、ランニングに対するハードルが低くなりますね。
はい、ですからランニングを始める際には「制限」と「頑張る」をやめてほしいと思っているんです。まず「楽しむ」を第一に思ってほしい。そして、ランニングの遊びの部分、楽しいことを皆さんにはどんどん発信してほしいですね。
東京のど真ん中を大勢で走る、もうお祭り
――東京マラソンの価値、存在意義に関してはどのように感じていますか?
まず参加者の人数ですよね、38000人。凄いなと思います。かつ、その内訳を見ても外国人のランナーが多い。そして、ここが一番のポイントだと思うのですが、ランニング習慣のない人でも出てみたいと思う大会であること。抽選に当たったから出てみようとか、そういうふうになっていることが凄いですよね。東京マラソンをただ知っているだけではなく、その価値が認知されているところが素敵な大会だなと思います。
――では、普段走っていない人もなぜ東京マラソンだったら走りたいと思うのでしょうか?
いやあ、それはちょっと難しい質問ですね。その「なぜ」が解明できたら、マラソン全体がもっともっと盛り上がるんだろうなと思いますが(笑)、僕が思う中では、まず日本の首都で開催されること。これだけの街中の大きい道路を走れることってなかなかなくて、結局、どのマラソン大会も街の一番メインの道路を止めることはできないみたいなんです。でも東京マラソンはそれをクリアしている。しかも42km全部がそう。なぜ東京のような巨大な街でそんなことができるのだろうといつも不思議に思っているのですが、その東京のど真ん中をこの大人数で走るなんて、もうお祭りじゃないですか。それに尽きるなと思いますね。
――ボランティアさんに関してはどうでしょうか?
はい、ボランティアの皆さんもめっちゃ多いですよね。給水担当の方たちも凄く熱量高くやってくださっているので、いつもありがたいです。マラソン大会の評価って、ボランティアさんやスタッフさんの熱量で左右される場合って結構あるんですよ。スタッフ、ボランティアさんがランナー一人ひとりに声を掛けてくれるだけでマラソン大会の評価が変わるくらい。地方で成功している大会はやっぱりその熱量が高いんですよね。だから、東京マラソンは運営スタッフ、ボランティアさんのホスピタリティが凄く高いなと感じていますし、そのおかげで東京マラソンは凄く走りやすくて、僕はいつも良いタイムが出ますね。
「涙」と「笑顔」の東京マラソン
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――東京マラソンと三津家さんの印象深いエピソードについて教えていただけますか?
これはYouTube動画のタイトルにもしているのですが、2023大会が「涙の東京マラソン」。めっちゃ泣いちゃったマラソンだったんですよ。というのも最初にめちゃくちゃ突っ込んでしまって、凄く苦しいレースになってしまったんです。でも、その時に沿道の方たちがめちゃめちゃ応援してくれて、本当に鼓膜が破けるってこういうことを言うんだと(笑)。これは箱根駅伝を走ったランナーたちが「沿道の人たちの応援で鼓膜が破ける」みたいなことを言っていたのですが、同じようなことを東京マラソンで初めて味わうことができました。かつ、東京マラソンは参加ランナーとのすれ違いも多いんですけど、ランナーと沿道の皆さんの両方から声を掛けていただいて、それが嬉しすぎて30km過ぎでもうワンワン泣いちゃいましたね。
そういうことがあったので、2024大会は絶対に笑顔でフィニッシュしようと思って走ったら、自己ベストが出ました。しかも応援していただいた全員に手を振るなど対応できた自信もある中での2時間28分7秒でしたので、自分の中でこれ以上ない走り、自分の完成形を出せたのが去年の東京マラソンでした。自分も楽しめたし、みんなにも楽しんでもらえたかなと。もうこれを超えるマラソンはないなと思うくらいの出来だったので「笑顔の東京マラソン2024」というタイトルで動画を出させていただきました。
――2025大会はどのようなテーマで走ろうと思っていますか?
今回は「魅せる」方で頑張りたいですね。エンターテインメントの方向性でもっと参加者や沿道に来てくださった人たちに楽しんでもらえるように走りたいなと思っています。その上で、タイムとしても2時間28分を切りたいなと。日々成長をお見せするためにも去年の上を目指そうと思っていますし、エンタメもタイムもどっちも超えてやろうとモチベーション高く持っています(笑)。
いつの日か全年齢、男女の割合が均等になれば
――東京マラソン財団は、「世界一安全・安心な大会」、「世界一エキサイティングな大会」、「世界一あたたかく優しい大会」を3本の柱にして、『世界一の街東京で、世界一の東京マラソン』を実現していきたいと掲げています。これら3本柱も含めて、今後の東京マラソンにはどのようなことを期待していますか?
期待したいことと言えば、もっと多くの人が楽しめる大会になればいいなと思っています。今はある一定の人が楽しんでいる大会、データにもあるように40~50代の男性が多い大会になっていると思うんです。だからこそ僕としては20代の男性、女性を増やしていきたい。特に20代女性の割合が増えれば、勝手に30~40代の男性はついてきますよね(笑)。サウナやゴルフのように若い年代の人たちがランニングを楽しめるように、東京マラソンもいつの日か、いろいろな施策を通して全年齢・男女の割合が均等になったらいいですよね。実は僕も自分のYouTubeやSNSでは全年齢・男女比が均等になるように意識的に努力しているので、若い女性を東京マラソンにたくさん走らせたいというのが僕の目標でもあるんです。
――では最後に、三津家さんにとって東京マラソンとは? #MyTokyoMarathon is…?
ひと言で言うのは凄く難しいですが、僕自身のマラソンの頂点ですかね。昨年の東京マラソンの走りが現在の自己ベストですし、SNSの反応も一番いいんですよ。なので、その年の集大成という感じですね。1年のまとめを、毎年の東京マラソンで出し切っているなとも感じています。実はこの時期は4週連続フルマラソンで、東京マラソンがそのラストなんですよ。愛媛マラソン、地元の熊本城マラソン、観光大使をしている玉名市の玉名いだてんマラソンとあって、最後に東京マラソンが来るので、この1カ月の集大成でもありますし、1年間の集大成でもあるんですよね。だから、僕の1年のサイクルは3月締めの4月始まり(笑)。4月からはまた秋、冬に向けた新たなマラソンが始まり、3月の東京マラソンで全てを出し切るために走っています。