Interview Relay ~42のストーリーで想いを繋ぐ~
My Tokyo Marathon is…? 「好きなこと+走ること」の楽しさを伝えていく
- 支える人
東京マラソンへの想いを42のストーリーで繋ぐインタビューリレー。
今回は東京マラソン財団事業本部の林良事業本部長です。
ランニングイベント事業、ランニングライフ事業、ウェルネス事業などを担当する立場から見た東京マラソンの魅力や価値、そして節目となる2027年の20回大会に向けた展望などを語っていただきました。
「どえらいイベントが東京にできたなぁ」
――過去の経験や背景なども踏まえ、2018年に東京マラソン財団の職員になられた経緯を教えてください。
はい、私は20代のころはミュージックビデオや企業のPRビデオ、イベント中継など映像を制作していました。当時、1ヶ月で家に帰れたのは2、3日くらい。その後、30歳でイベント会社の立ち上げに参加し、新しい海外の技術を使って大型イベントの映像をつくったり、35歳からはアウト・インバウンドイベントをプロデュースするようになって年間100日以上を海外で過ごすような日々でした。そして2015年の東京マラソンで、アボット・ワールドマラソンメジャーズがコースムービーを収録するという機会があり、その撮影コーディネートを担当したのが東京マラソンに携わった初めての経験でした。その後にご縁があり、2018年に東京マラソン財団に入職しました。
――東京マラソンの職員になる以前は東京マラソンのことをどのように感じていましたか?
東京マラソンが創設される前、当時の石原都知事が「東京を巡る市民マラソンをつくるんだ!」というニュースが鮮烈でしたね。それで2007年の第1回大会時に知り合いがフィニッシュ付近で富岡八幡宮例大祭の神輿を出すということで観に行こうとしました。でも結局大雨で、テレビを見ながらその知り合いと酒を酌み交わしたのを覚えています。入職するまではマラソンとは無縁の人生を歩んでいましたが、イベントマンだった観点から、「どえらいイベントが東京にできたなぁ」と思った記憶が鮮明にあります。
夢のある大会サポートの向上を心掛けて
――事業本部は大会においてどのようなことを担う部署ですか?
東京マラソンそのもの以外で実施されている付随イベントのほぼ全てに携わるのが事業本部です。例えば、東京マラソンEXPO、東京マラソンフレンドシップラン、東京マラソンファミリーランといった恒例の名物イベントをはじめ、1ヶ月前から大会を盛り上げる東京ランニングフェスタ、次回大会の出走権が当たるバーチャル東京マラソンなども事業本部が手掛けています。東京マラソン当日も、ペースセッターの選定・管理やエリートランナーの表彰式、フィニッシュ後のランナーを迎え入れる皇居外苑の応援ベースも事業本部が担当しています。
――事業本部として東京マラソンならではの工夫や難しさなどがあれば教えてください。
首都圏にお住まいのランナーだけでなく、上京するランナーや来日するランナーにとって、東京マラソンは確実に東京旅行のメインイベントの一つであると思います。前回の東京マラソンEXPO 2024の初日などは見渡す限り外国人来場者で埋め尽くされ、「ここは日本なの?」と見間違うばかりの光景でした。東京マラソンがどんどんインターナショナルな大会へと育っていくとともに、我々もそれに恥じない夢のある大会サポートの向上を心掛けながら、皆さまの期待に応えられるイベントづくりに矜持を持って臨んでいます。
――ランニングを通じてよりよい生活と健康増進をサポートし、「走る楽しさ」を伝える東京マラソンとして運営するONE TOKYOなどの事業への想いについて教えてください。
2011年に開設したONE TOKYOは現在65万人を超える会員のクラブに成長しました。今年度から新たに立ち上げたONE TOKYO GLOBALも含め、「東京マラソンを愛してくださるランナーが世界中にこんないるんだ!」と身震いする思いです。東京マラソンを走る会員の皆さまが自身で掲げた目標を達成できるよう、それぞれのレベルに応じたランニングサポートを年間通じて提供していくのがONE TOKYOの大きな存在意義の一つです。皆さまが自信を持ってスタートラインに立ち、笑顔でフィニッシュを迎えられるよう、これからもユニークなサービスを提供してまいります。
あらゆる方々を等しく迎えられるホスピタリティを準備
――“東京”にとって東京を舞台に開催する東京マラソンの存在、価値は何だと思いますか?
東京スカイツリー、東京タワー、東京ドームなど、「東京」を冠し「東京」を象徴する建造物や施設は数多ありますが、東京マラソンは常設されている「モノ」ではありません。移動すれば必ずそこにあるものではなく、年に一度「東京がひとつになる日。」にだけ現れる、参加者全員が作り出す「コト」であり、次の日には跡形もなく日常へと戻っている「夢うつつ」と言っていいのかもしれません。ただ、人間の喜怒哀楽すべてが詰まった上質なエンタテインメントであることは揺るぎない事実であり、世界一のメガシティ・東京でそれが起こる。その価値は計り知れないと思っています。
――エリート選手、一般ランナー、ボランティアにとって東京マラソンの存在、価値とは何だと思いますか?
エリートは順位を、一般ランナーたちが目指すのは「自己ベスト記録」です。そして、東京マラソンのボランティアもまたその大半がランナーであるが故、ランナーの気持ちに寄り添ったサポートを心掛けてくれています。自分との闘いに挑むランナーと、その気持ちを汲んで懸命に支えてくれるボランティア。その晴れ舞台が東京マラソンなんだと思います。フィニッシュしたランナーへのインタビュー映像を編集する際、ボランティアへの感謝にむせびながら話してくれる姿が多く、「これこそ東京マラソン!」と改めてその価値を感じます。
――東京マラソン財団は、「世界一安全・安心な大会」、「世界一エキサイティングな大会」、「世界一あたたかく優しい大会」を3本の柱にして、『世界一の街東京で、世界一の東京マラソン』を実現していきたいと掲げています。これについて事業本部としてどのように感じ、どのような取り組みを行なっていきたいと考えていますか?
早野理事長は「エリートレースだけでなく、一般の方もワクワクするような一週間を過ごしてほしい」と話しています。東京マラソンを目指してやってきたランナーたちが、何日か前から自分の気持ちを高揚させられる時間や空間を提供し、クライマックスである東京マラソンをより楽しめるための仕掛けやイベントをつくっていくことが事業本部の担うべきポイントだと思っています。そして、あらゆる方々を等しく迎えられるホスピタリティを伴うことができるように準備していきたいと考えています。
東京マラソンは気持ちを燃え上がらせてくれるガソリン
――ご自身にとっての東京マラソンとは? #MyTokyoMarathon is…?
毎年目の前に現れる大きな山であり、気持ちを燃え上がらせてくれるガソリンであり、ランナーの笑顔を見せてくれる最高の肴です。寝ずに映像をつくっていた若かりし日々や、世界中を飛び回ってイベントをつくってきた今までのキャリアは、「東京マラソンをつくるために積み上げてきたんじゃないか」と思うことが往々にしてあります。ご縁があって東京マラソン財団に入職したことは、自分にとっては社会人人生の集大成。今まで得た知識や経験のすべてを注ぎ込んで、より誇れる大会づくりに寄与できるよう精進します。
――今後、ランニングを通して人々が、社会がどのように変わっていってほしいと考えていますか? また、その実現のためには東京マラソンがどのように発展していくことが理想だと考えますか?
今後、日本の人口は減っていくと言われています。この現実に立ち向かう日本人はより長生きする必要があるのではと個人的に思っています。長生きするためには健康でなければなりません。そして健康をキープするためには運動する必要があり、人間ができる最もシンプルな運動は歩くことと走ることです。でも、ただ走れと言われても、人はなかなか走ることはできないと思うんです。
「走る楽しさで、未来を変えていく」
東京マラソン財団が掲げる理念の通り、次に目指すのは自分の好きなことと走ることを組み合わせる楽しさを伝えていくこと。その頂点にあるのが東京マラソンだと思っています。
――その他 東京マラソンへの想いをお願いします。
「都市マラソンの成功とは何だろう?」と常に考えているんです。それはお天気が8割かもしれませんが(笑)。でも、今後もその本質を探しながら、東京マラソンづくりを担っていきたいと思っています。