Interview Relay ~42のストーリーで想いを繋ぐ~
My Tokyo Marathon is…?人々における<スポーツ>の位置付けを高める
- 支える人
東京マラソンへの想いを42のストーリーで繋ぐインタビューリレー。
3人目は2024年よりレースディレクターに就任した大嶋康弘レースディレクターです。
レースのカラーを決める演出家の役割を果たすとも言われているレースディレクターの立場から見た東京マラソンの魅力や価値とは? そして節目となる2027年の20回大会に向けてどのように彩っていくのか、その展望などを語っていただきました。
日本陸連、東京2020組織委員会で様々な大会を実現
――レースディレクターになる前の経験なども踏まえ、2024年にレースディレクターに就任された経緯を教えてください。
前々職の日本陸上競技連盟では事業部長として特にマーケティング、競技会事業を担当し、MGCの構想・実現に向けた取り組みや、さいたまマラソンの実現、千葉クロスカントリーの大衆レース化などを進めてまいりました。また、出向した東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会では、マラソン・競歩の札幌移転に伴うIOCやワールドアスレティックスとの厳しい交渉担当を経ながらのコース決定など、イベントを具現化させてきたことは主な実績として自負するところです。その後、過去に所属した会社での上司でもあった早野理事長から、このような実績を評価いただき、レースディレクターの後任としてお声掛けいただいたと認識しています。
――レースディレクター就任前は東京マラソンをどのように感じていましたか?
日本国内で実施される陸上を含めた全てのスポーツイベントの中で、最も規模が大きく、国際競技会のエリートのレベル、参加型の市民スポーツイベントのレベルとしても、また、チャリティーやボランティア活動など社会を巻き込むイベントとしてもその全てにおいて突出していると感じていました。また、陸連に在職中は東京マラソン財団理事も務めさせていただいた時期もありますので、さまざまな事業の存在も理解していました。東京マラソンは財団組織全体で日本人のスポーツの存在価値を高めることができる唯一の組織であり、大会でもあると感じていました。
関わる全ての人が「ああよかった!」と思う舞台に
――実際にレースディレクターに就任されてから感じる東京マラソンの魅力について教えてください。
まず、世界最高峰のマラソン競技のレース、男女とも世界記録を輩出できる大会として東京マラソンは存在し、それに相応しい選手が世界中から参加してくれています。そして、そのレースに私たち一般ランナーも全く同じコースを、同じスタートの号砲で走れることが魅力です。また、直近の大会では海外からもおよそ15,000人のランナーが参加しました。世界から集まった人たちが、それぞれの目的や目標を達成することを願い、沿道の応援やボランティアの方々とともに誰もが「東京がひとつになる日。」の主役になれることが何よりの魅力だと思っています。
――レースディレクターの役目とは何か、そして自身が目指す東京マラソンのレースディレクター像についてどのように捉えていますか?
東京マラソンに関わる全員の想いを実現し、達成感を得ていただくために大会を整え、運営することが重要です。東京マラソンは世界で最も安全に安心して参加できる大会として、今までも多くの人たちに認識されていると思います。これからは安全安心に加え、関わる全ての方たちが達成感を抱く、そのような大会としての工夫がもっと必要だと思っています。世界記録を狙う選手、スタートラインに立てた38,000人のランナー全員、ボランティア、沿道で応援しれてくれる人たち、そして地域の住民の方々、少しでも東京マラソンに関係するすべての人が「東京マラソンがあって、ああよかった!」と思っていただける舞台を整える組織の牽引者でありたいと思っています。
――エリートレースの特徴について、他の大会との違いなどについて教えてください。
東京マラソンは3月1週目の日曜日に開催されます。世界陸上やオリンピックなど選手たちが「勝ち」を目指すその年の最重要レースの5〜6ヶ月前という日程でもありますので、一度東京で記録を狙っておきたいとする選手が多いと思います。それと、トラックからマラソンに転向して距離を延ばす選手たちにとっては、東京でチャレンジすれば、もし失敗しても、またトラックに戻って再チャレンジできるという時期の開催でもあります。ですので、参加するエリートたちは自ら積極果敢に記録に挑み、オリンピックや世界陸上のメダルを獲りに行く超エリートたちが「本気で走る」オーセンティックなマラソンレースと言っても過言ではありません。
次の目標を作れる、そんな存在でありたい
――“東京”にとって東京を舞台に開催する東京マラソンの存在、価値は何だと思いますか?
ニューヨーク、ロンドン、パリ、東京は「世界の都市」として誰もが思い浮かべるでしょう。その東京で、アボット・ワールドマラソンメジャーズの1つでもある世界最高レベルのマラソン大会が行われることは、参加型スポーツイベントとしてのみならず、世界の中での「東京」という都市のブランディング向上にも寄与していると思います。それは数字に現れる有形の経済効果と、人々のプライド感の向上など無形の社会効果と、その双方があります。また、2007年にスタートした東京マラソンモデルが日本全国に広がり、マスマラソンが国内に波及していきました。これらが東京マラソンの存在価値であると思います。
――エリート選手、一般ランナー、ボランティアにとって東京マラソンの存在、価値とは何だと思いますか?
それぞれの参加の目的は違うと思いますが、自己のそれぞれの思いを遂げられる場所、機会ではないかと思います。目標がクリアできたり、皆さんにありがとうと言ってもらえたり、達成感を感じて満足いくこともあれば、そうでないこともあると思います。次はもっと頑張ろう、こうすれば良かったなど、たとえそうであっても、東京マラソンによって次の目標を作れる、そんな存在でありたいと思っていますし、それが価値なのではないかと思います。我々ももっと皆さんに達成感を持ってもらえるような大会づくりをしなければなりません。東京マラソン財団にとってもそれが東京マラソンの価値かもしれませんね。
――東京マラソン財団は、「世界一安全・安心な大会」、「世界一エキサイティングな大会」、「世界一あたたかく優しい大会」を3本の柱にして、『世界一の街東京で、世界一の東京マラソン』を実現していきたいと掲げています。これについてレースディレクターとしてどのように感じ、どのような取り組みを行なっていきたいと考えていますか?
社会が変化し、テクノロジーが発展し続けている以上、実はいつまで経っても世界一など実現できるはずはないと思っています。変化のある世の中で何をもって世界一とするのか、ゴールはありません。ですので、大切なことは、未来永劫「世界一」を目指していくという理念であると思います。そのための取り組みも、挙げればキリがありません。常に皆さんの思いを表現できるイベント、達成感を味わっていただくイベントを目指し、なんでもやってみたいと考えています。そうすればこれらの「世界一」に少しでも近づけるのではないかと思います。
一人ひとりのストーリーに華を添え続けたい
――大嶋レースディレクターにとっての東京マラソンとは?
#MyTokyoMarathon is…?
東京マラソンは日本人のスポーツのあり方に変化をもたらすことが出来るイベントだと思っています。自分自身にも目標がありまして、それは「人々における<スポーツ>の位置付けを高めること」です。楽しみのスポーツ、生活のスポーツ、健康のスポーツなど、スポーツに取り組む意義は人それぞれだと思います。人間は当たり前ですが、生きていくことが最優先です。心の豊かさを含めて生きていくためには健康が大事ですし、生きていくための経済を実現するためにはやはり健康でなければならず、運動やスポーツは大切です。それを実現できるのは東京マラソンだと思っています。「みるスポーツ」「するスポーツ」「支えるスポーツ」として東京マラソンは人々のスポーツの位置付けを高められると思っていますし、それを実現したいと思っています。
――今後の東京マラソンをどのように発展させていきたいと思っていますか?
またはどのように発展をしていくと見据えていますか?
ひとつ前の質問に関連しますが、人々の中でスポーツの位置付けが高まれば、様々な要望も生まれます。そして多様性を皆さんが認識し、それぞれが互いに尊敬する社会の中で、スポーツイベントは必然的に社会に望まれるものへと発展していくと思います。それが実現できるのはランニング・ウォーキングを中心としたスポーツの行為であり、東京マラソンだと思っています。世界記録を狙う人、病気や怪我、障害から立ち直ろうとする人など、誰かのために、自分のために様々な望みを叶えていただくためには、なるべく多くの人が参加できる機会、誰もが参加できるコース、参加しやすい運営などが重要。そのためにテクノロジーを駆使することもありますし、人の心で繋ぐことでイベントを発展させることもあると思います。
――その他 東京マラソンへの想いをお願いします。
同じことの繰り返しとなりますが、東京マラソンは実はフィニッシュのないイベントです。毎年42.195kmという一時的なフィニッシュラインはありますが、そこに関わる人、社会はフィニッシュラインを通過した後もまだまだストーリーは続きます。「完走できて良かった」「ボランティア活動で感動した」で終わりではなく、そこからまた何かに向かって皆さんのストーリーは続いて行きます。私たち東京マラソン財団はその一人ひとりのストーリーの脇役として、主人公である皆さんに少しでも華を添えられる存在であり続けたい。そんな東京マラソンであり、それをずっと引き継いで行ければと思っています。