Interview Relay ~42のストーリーで想いを繋ぐ~

『My Tokyo Marathon is Always and on-going. 』 〜ずっと続けていきたい私の中の恒例行事〜

『My Tokyo Marathon is Always and on-going. 』 〜ずっと続けていきたい私の中の恒例行事〜

 

東京マラソンへの想いを42のストーリーで繋ぐインタビューリレー。2人目は2007年の第1回大会から毎年ボランティアとして参加している日下康子さんです。

ボランティア活動の魅力、楽しさをはじめ、東京マラソンとともにステップアップしてきた東京マラソン財団のボランティア組織『VOLUNTAINER』の成長、そして日本におけるスポーツボランティア文化の醸成など、第1回大会から参加してきた日下さんの視点から想いを語っていただきました。

毎回何かしらの学びと自己成長。大会の発展の力になりたいから続けられる。

――はじめに、日下さんが東京マラソンのボランティアを始めるようになったきっかけなどを教えてください。

 

はい、第1回大会から毎回ボランティアとして参加しています。最初は東京マラソンを走りたくてランナー抽選に応募したのですが、落選してしまったんですね。その後、何かのきっかけでボランティアを募集していると聞きました。これまで1991年の世界陸上などスポーツボランティアの経験がありましたし、母が当選してランナーとして走ることになっていたので、それなら私はボランティアをしてみようと思いました。参加してみてすごく面白いと感じましたし、いろいろな経験をさせていただきながら毎年参加して、今に至っています。恒例行事のようになっていますね(笑)。

 

――第1回大会から皆勤賞なんですね。なぜ毎年参加しようと思うのか、純粋に東京マラソンの好きなところを教えてください。

 

必ず何かしらの学びがありますよね。そして学びがあった後には反省があるので、その課題を解決しようとか、違うアプローチでやってみようとか、また活動している仲間から色々なヒントも得たりしますので、それを実行するために毎回参加したくなります。ボランティアのリーダーサポート(*1)をやらせていただく中で多くの人前で話したり色々な準備をするのですが、実は私、そういうことをするのが苦手なんです。でも、東京マラソンの場を利用させていただくことによって、事前準備や人前で話すことが少しずつできるようになったかも……とか(笑)。

 

また、大会自体からも毎回良くしていこうという姿勢や気持ちを強く感じられるのが嬉しいです。じゃあ、そのために自分は何ができるのかなと毎回考えるから、そこがやっぱり東京マラソンだからこそ、なのかなと感じますね。

 

スポーツボランティア文化の進化と醸成

東京レガシーハーフマラソン2024ではランナー受付でボランティア活動を行い、当日は出走した日下さん

 

――2007年の第1回大会当時から現在まで、東京マラソンのボランティアはどのように進化、変化してきたと感じていますか?

 

東京マラソン財団のVOLUNTAINERという組織ができたことによって、いろいろなことが体系として整備されてきたと思います。それに、今まで会ったことがないような背景を持つ人や公式ウェブサイトの記事で紹介されていた人たちと実際に知り合うことで「厚み」が感じられるようにもなりました。それは長くボランティアを続けてきたからこそ生まれたのかなと思いますね。「厚み」というのは活動そのものもそうですし、人と人とのつながりもそう。ボランティアも毎年参加するような人たちが増えてきましたから、経験の多い人たちから技を盗んだり(笑)、そういう意味でも長く活動することで「厚み」が出てきたと思います。同時に新たな仲間が加わることにより、彼らからのヒントや刺激が収穫できる喜び・楽しみもあります。

 

また、組織になってからはそれ以前よりインタラクティブに交流ができたり、運営とボランティアのやり取りが双方向になった気がします。参加者として組織に頼り切るつもりはないのですが、発信している情報からVOLUNTAINERはこういうことを意図しているんだなと分かると、そこを意識して活動してみようと考えるようになります。いろいろな意見を交換しやすくなったことで、VOLUNTAINERの改善力、実行力、発信力がどんどん上がっているのではないかなと思います。

 

――VOLUNTAINERは東京マラソンの10回目が開催された2016年に東京マラソン財団オフィシャルボランティアクラブとして設立されました。VOLUNTAINERの成長とともに日本におけるスポーツボランティア文化の成長、変化について何か感じていることはありますか?

 

東京マラソン第1回目の頃よりもずっと“ボランティア”という活動へ参加する人が増えているし、“ボランティア活動”というものがメジャーになり、ボランティアをすることが身近に感じられるようになりました。20年ぐらい前はボランティアをやっていると言うと、ちょっと変わっているねとか、なぜ無償で時間を犠牲にするの?という印象を持たれていた気がしていましたが、今はそうしたことを全然気にしないで『楽しいからやっている』という人たちが増えてきた気がします。

 

また、以前は同世代と話すことが多かったように思いますが、今はもっと上の世代も下の世代も人たちも増えていて、それぞれの世代にボランティア活動が広がっているように感じますね。

 

――スポーツボランティアは日本の文化の一つとして定着し始めていると感じますか?

 

そうした実感もありますね。私自身の経験としても「週末にこんなボランティアをしたんですよ」と職場で話したら、いつの間にか当時の会社の先輩も参加していて、その先輩がさらに家族や友だちを誘って来るなど、ボランティアがもう普通のことになっている気がします。親子や夫婦で参加も増えてきたようです。学生時代に体育会系の部活に入っていなかったという人たちが普通にスポーツ大会のボランティアに参加するようになったのはきっと最近のことなのかなと思います。

 

ボランティアとして、職員として、ランナーとして

東京2020大会組織委員会職員として働いていた頃の日下さん

 

――ここまではボランティアの楽しい思い出を語っていただきましたが、一方で大変だったこと、苦労したことなどはありましたか?

 

第1回大会や2019大会は雨が降って寒かったなとか、そうした細かいことはあったのですが、ボランティアをしていて苦労したなと感じたことは本当にないんです。ただ、つらい経験と言いますと、2020年は新型コロナウイルスがやって来て通常開催ができず、エリートランナーの選考大会のみになってしまったんです。あの時は大変だったというよりは、悲しくてつらかったですね。だから2022年に大会が再開されたことはやっぱり嬉しかったです。今年の2024大会で本当の通常開催に戻りましたよね。以前のように思い切り声を出して応援したり、沿道で多くの人たちが観戦する姿に感動を覚えました。

 

――日下さんはボランティア活動をされている一方で、東京2020大会には組織委員会の職員として関わったとお聞きしています。スポーツイベントに関わるにあたってボランティアと仕事の違い、それぞれの楽しさなどを教えていただけますか?

 

ボランティアだと基本的には作ってもらった枠組みで活動できる安心感があり、その中で自発的に行動したり工夫するのが面白いですね。職員は大会当日まで毎日がカウントダウンの待った無しの状況なので、とにかくやるしかないという責任感じていました(笑)。最終日+αまでも、テンションの維持は必要ですし。加えて関係者の範囲が広大で、楽しむ余裕は少なかったですが得難い経験になりました。一つの大会を俯瞰する距離感が圧倒的に広がるのも、職員の立場なのかなとも思いますね。無責任にボランティアをしたことはないのですが、緊張感と俯瞰の度合いが一番の違いかなと思います。

 

――オリンピックと言えば、今年のパリ大会にはボランティアとして参加したとのことですが、東京マラソンとの違いについて何か感じたことがあれば教えてください。

パリ2024大会ボランティアとして活動していた日下さん

 

パリ大会のボランティア活動は期間限定のイベントにボランティアとして参加して楽しんでいるというか、そんなリラックスした雰囲気がありました。東京マラソンのボランティアでは、毎年繰り返される大会として、より良い大会を目指す意識を感じます。また、ルールをきちんと守りながらも心地よく楽しんで活動しているので、参加するランナーから見ても同じように見えるのではないでしょうか。

 

――日下さんはランナーとしてマラソン大会に参加した経験もあるとお聞きしました。その際にあらためてボランティアの存在の大きさを感じることなどはありますか?

 

はい、フルマラソンは出走回数が少なくて、ハーフマラソンへの参加が多いです。どの大会もボランティアの皆さんが活動をしながらも、常に元気にニコニコと応援していただけることをありがたく感じます。身近な東京レガシーハーフマラソンですと、スタート・荷物預け&返却・コース監察・給水所・フィニッシュの各所で、沢山のボランティア仲間に会えるのが嬉しくて、足が前に進む力になります。冷たい雨の中での開催時は、キャンセルせずに活動している姿を見ると本当にありがたくて、逆にこちらから手を振ってしまいました。旅も兼ねて参加する他の大会では、初めてお会いする現地の方々やボランティアの皆様からの応援にも後押しを頂けることが嬉しいです。

 

あらゆる人たちが、色々な形で走る体験ができる場を

 

――日下さんにとってボランティアとは何でしょうか?

 

きれいごとを言いますと、仕事や学校とも違う環境で学んだり、成長したり、楽しむことができる良い機会だと思っています。私の中では東京マラソンが恒例行事になっているので、「ああ、今年もこの季節が来た!」と思うんですね。仕事や日常生活の中で色々な出来事があっても、東京マラソンのボランティアをすることが1年のサイクルの中にあるので、私はそれを軸にさせてもらっているんです(笑)。

 

――今後、東京マラソンにはどのようなことを期待していますか?

 

圧倒的にブランド力がありますので、それをもっと活かしてほしいなと思います。例えばみんながみんなフルマラソンを走れるわけではないので、東京レガシーハーフマラソンや、東京マラソンの前日や当日にフレンドシップランやファミリーラン、バーチャル・ランのように、あらゆる人たちが色々な形で走る体験ができる場を提供していけると、もっと面白くなるのかなと思います。

 

――そうなると、日下さんの目にはどのような未来が映っていますか?

 

1年に1回のお祭りに何らかの形で参加しようと思う人が増えるのかなと思います。そして、それが日本全体に広がって行けば、スポーツが得意じゃなくても何かの小さいイベントに関わることで東京マラソンに参加できたと思う機会も増えていくと思います。それがボランティアであってもいいと思います。ボランティアはもちろん世代交代があってもいいと思いますが、私自身としては色々な世代が加わって循環して広がって行くこともまた一つの文化かなと思いますね。どの世代にもきっと役割があると思いますし、みんなで経験をシェアし合って、みんなでやっていくことがいいのかなと思います。

 

私自身は20回目の東京マラソンに参加して、成長感を持って自分の中で一周回った感を味わいたいですね。1991年世界陸上で一緒に活動した年上の方々の頼もしさが素敵で、自分も何十年後かそうなれるといいなと、ぼんやりと感じたことを思い出しました。母校の陸上部の現役や卒業生にもボランティアへの参加の声掛けをしてみたいなとも考えています。

 

――では最後に、⽇下さんにとっての東京マラソンとは? #MyTokyoMarathon is…?

 

My Tokyo Marathon is Always and on-going としました。ずっと続けていきたいという気持ちの「on-going」、そして恒例行事なので「Always」です(笑)。

 

*1リーダーサポートとはVOLUNTAINERリーダーやメンバーの皆さんを下から支える存在として、大会やVOLUNTAINER組織の運営をサポートする存在です。

詳しくはこちら

 

日下さんのボランティアヒストリーについてさらに知りたい方はこちら

https://www.voluntainer.jp/news/detail/188

https://www.voluntainer.jp/news/detail/225

 

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