Interview Relay ~42のストーリーで想いを繋ぐ~
My Tokyo Marathon is…?多くの人たちの生きる力となるように
- 支える人
東京マラソンへの想いを42のストーリーで繋ぐインタビューリレー。
今回は副島正純車いすレースディレクターです。
年々注目が高まり、今では東京マラソンの大きなコンテンツの1つである車いすマラソン。第1回大会の優勝ランナーでもあり、現在は車いすレースディレクターとなった副島さんから見た東京マラソンの魅力や価値とは? そして節目となる2027年の20回大会に向けてどのように彩っていくのか、その展望などを語っていただきました。
車いすマラソンの魅力を伝え、価値を高めたい
――車いすレースディレクターになる前のご経験なども踏まえ、車いすレースディレクターに就任された経緯を教えてください
私は2007年2月18日に開催された第1回東京マラソンの車いす男子で優勝し、その後、同年4月からメジャーマラソンへの挑戦を始めました。遠征先のボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨークでは、東京マラソンのスタッフの方々とお会いする機会が増え、車いすレースの大会情報をお伝えすることが多くなりました。そうした交流を通じて、東京マラソンが車いすレースに対する理解を深め、発展を目指していることを感じました。そして、そのご縁から東京マラソン大会の車いすアドバイザーを務めさせていただき、さらに大会がメジャー化する際には車いすレースディレクターという役割をお任せいただくことになりました。
――車いすレースディレクター就任前は東京マラソンをどのように感じていましたか?
東京マラソンは国内最大の大会であり、出場することで自分たちのパフォーマンスを通じて多くの人に車いすマラソンを知っていただける、そしてメディアを通して自分たちの言葉でその魅力を伝えられる意義のある大会だと感じていました。しかし、現実は厳しく、東京マラソン初期にはエリートランナーの練習映像やスポンサー映像が優先され、テレビ放送では車いすマラソンのスタートは全く見られない状況でした。これにはとても残念な思いがありました。
さらに、表彰式の場で大会関係者から「車いすマラソンって何キロ走るの?」という質問を受けた時、私たちの競技がまだ認知されていないことを痛感しました。この経験を通じて、もっと車いすマラソンの魅力や存在を多くの人に知ってもらい、競技の価値を高めていかなければならないと強く決心しました。車いすマラソンが多くの人に理解され、盛り上がる大会になるよう、今後もその発展に尽力していきたいと思っています。
「世界中の車いすランナーにとって特別な大会」を目指して
――実際に車いすレースディレクターに就任されてから感じる東京マラソンの魅力について教えてください。
「東京マラソンは世界一安全・安心な大会」だと感じています。激しい起伏もなく、鋭角なコーナーも少ないため非常に走りやすい環境です。さらに、路面は綺麗でスムースであり、応援者が側道に多くいても、コースを横断する人がいないため、安全性がしっかりと確保されています。
特に、路面のスムースさは車いすランナーにとって最大の願いです。私たちの使用するタイヤは転がりを良くするために軽量で薄く作られていますが、その分、凹凸や道路の切れ目、尖った路面から受ける衝撃でパンクするリスクが高くなります。東京マラソンのコースは、その点でメジャーマラソンの中でもトップレベルの綺麗さを誇り、安心してレースに集中できる環境です。
しかし一方で、東京はビル風が強く、風向きが予測しづらいことが課題です。この風さえなければ、もっと良いタイムが出せると思います(苦笑)。それでも、東京マラソンの安全性と走りやすさは世界に誇れるものだと思います。
――車いすレースディレクターの役目とは何か、そして自身が目指す東京マラソンのレースディレクター像についてどのように捉えていますか?
私は車いすランナーとして、東京マラソン以外の大会でも世界中の選手たちと競い合う機会があります。東京マラソンは「安全で安心な大会」としてすでに素晴らしい環境が整っていますが、さらに盛り上げるために、速い選手たちを集め、先頭集団を大きくしていく努力をしています。先頭集団が大きくなることで、その中で駆け引きや戦略が生まれ、選手同士が互いに切磋琢磨し合うことで、より速いタイムが引き出されると考えています。トップレベルの選手が集うことで競技のレベルが上がり、その熱い戦いが多くの人々に伝われば、車いすマラソンへの注目度も高まるでしょう。
そして、東京マラソンが「速い選手が多く挑みがいのある大会」になることで、次世代の選手たちにとっても目標となる舞台となり、彼らが憧れ、挑戦したいと感じる大会づくりを目指しています。競技としての魅力をさらに高め、東京マラソンが世界中の車いすランナーにとって特別な大会となるよう、今後も力を尽くしていきたいです。
――エリートレースの特徴について、他の大会との違いなどについて教えてください。
エリートレースは、車いすマラソンでもプロ選手やトップアスリートが出場する大会です。参加には厳しい基準記録や資格が求められます。大会の目的は優勝争いや記録更新であり、選手同士の駆け引きや戦略が大きな見どころになります。また、高額な賞金や記録達成ボーナスが設定されていることが多く、選手にとっては重要な収入源となります。コースは記録が出やすいように設計され、高速レースが期待されます。一般の市民大会とは異なり、競技性や結果が重視されます。エリートレースは、世界トップレベルの選手が集結し、そのパフォーマンスで観る者を魅了します。
走者、応援者、大会スタッフそれぞれの“次”への意欲に
――“東京”にとって東京を舞台に開催する東京マラソンの存在、価値は何だと思いますか?
東京マラソンは、東京にとって都市の魅力や価値を世界に発信する存在だと思います。アボット・ワールドマラソンメジャーズの一つとして、国内外の注目を集め、東京の美しい街並みや観光名所を舞台にした都市ブランドの向上に大きく貢献しているのではないでしょうか。また、多くのランナーや観光客の参加による経済効果は大きく、宿泊、飲食、観光など都市全体の活性化も促していると感じます。市民ランナーの参加や沿道の応援によって、東京全体が一体感と活気に包まれ、スポーツ文化や健康意識の推進にも繋がりますよね。ですので、東京マラソンはスポーツ都市としての価値を高め、東京の魅力を世界に示すイベントだと思っています。
――エリート選手、一般ランナー、ボランティアにとって東京マラソンの存在、価値とは何だと思いますか?
大都会である東京を貸し切り状態で走り回れる東京マラソンの存在・価値は、凄いと思います。それに、走っているときの沿道の応援は走者の元気に繋がり、頑張ろうとモチベーションが上がります。これは走者にしかわからない事なのですが、その応援の重要性と受ける感動は自分の力以上のものが出せる、そんな経験を走者はします。それが“次”への意欲にもなるし、反対に自分も次は応援しようとも思います。東京マラソンでは、走者、応援者、ボランティア、大会スタッフの交流が大きな波となってそれぞれの“次”への意欲につながり、みんな元気になります。その存在、価値はものすごく大きなものだと私は思います。
――東京マラソン財団は、「世界一安全・安心な大会」、「世界一エキサイティングな大会」、「世界一あたたかく優しい大会」を3本の柱にして、『世界一の街東京で、世界一の東京マラソン』を実現していきたいと掲げています。これについてレースディレクターとしてどのように感じ、どのような取り組みを行なっていきたいと考えていますか?
先ほどお答えした内容と重なる部分もあるのですが、東京マラソンは現時点で「世界一安全・安心な大会」だと思います。エキサイティングな大会づくりとしては、東京の美しい街の魅力を最大限に活用し、沿道の応援や演出で大会を盛り上げ、デジタル中継・映像技術を活用して大会の魅力を世界中に届けたいです。そしてボランティアや地域住民の協力を大切にし、あたたかいおもてなしの心を育むことが重要です。すべてのランナーに寄り添うサポート体制を整え、障がい者ランナーや海外ランナーなどにも優しい運営を行い、誰もが歓迎される大会を目指します。
世界中の人々に愛される「東京の誇り」
――副島車いすレースディレクターにとっての東京マラソンとは?
#MyTokyoMarathon is…?
私にとって東京マラソンとは、生きる力になるものです。第1回大会に出場した際、「絶対に優勝してやろう! そして日本中の人に車いすマラソンを知ってもらおう、自分の言葉で伝えていこう!」と強い決心を持って走りました。その時の思いが今でも私の原動力となっています。これからの東京マラソンは、私と同じようにそれぞれの目標・強い想いを持って走る選手たちを受け入れ、支えられる大会にしていきたいと考えています。ランナーは、走ることが大好きです。その気持ちを思いっきり込めて、心から楽しめる、そして走ることの素晴らしさを感じられる大会を作ること――それを、私自身が楽しみながら取り組んでいきます。東京マラソンが多くの選手にとって目標となり、生きる力となるような大会に育てていきたいと思っています。
――今後の東京マラソンをどのように発展させていきたいと思っていますか?
またはどのように発展をしていくと見据えていますか?
今後の東京マラソンは、世界一の大会としてさらなる発展を目指し、東京ならではの魅力を発信したいと思います。そして今後はさらに世界中からトップランナーと市民ランナーを惹きつける大会を目指します。具体的には、エリート選手の記録向上を支援する環境整備と、外国人ランナーへのサポート強化を進め、トップ選手から市民ランナーまで満足できる大会を実現します。また、デジタル技術を活用し、世界中の人々に愛される「東京の誇り」となる大会を実現していきたいと考えています。
――その他 東京マラソンへの想いをお願いします。
東京マラソンは、走る人、応援する人、支える人、すべての人が一つになれる場所です。ランナーにとっては目標や夢を実現する舞台であり、都市全体が活気と感動に包まれる瞬間だとも思います。この大会が、ただ走るだけではなく、参加するすべての人にとって意味のあるものになってほしいと願っています。私はこれからも、東京マラソンが「生きる力」を与えてくれる大会として成長し続け、走る喜びや挑戦する気持ちを分かち合える場になることを願っています。そして、次世代のランナーたちが目標にし、憧れを持てる大会をつくるために、自分自身も走り続け、支え続けていきたいと思います。